ケネス・ヘーゲン(2)別のイエス、別の福音、別の信仰

ケネス・ヘーゲン

前回の記事では、「繁栄の神学の父」と呼ばれるケネス・ヘーゲンの神学「ワード・オブ・フェイス」の概要と、「小さな神の教え(little god doctrine)」を紹介しました。後半の今回は、ヘーゲンのさらに問題のある教えを見ていきます。

別のイエス

ヘーゲンは、「イエスは復活した日に神の子となった」と語り、聖書が伝えるイエスとは別のイエス(2コリント11:4)を宣べ伝えています。1

次の事実を理解しない限り、イエスの名の権威を理解することはできない。イエスは、苦しみの牢獄の中で、つまり地獄の中で、私たち一人ひとりに代わって義の要求を満たし、私たちの身代わりとなって死んでくださった。天国の神はこうおっしゃった。「もう十分だ」。そして、イエスをよみがえらせたのだ。イエスの霊と魂を地獄から連れ出し、イエスの体を墓からよみがえらせ、「あなたはわたしの子。わたしが今日、あなたを生んだ」と言われた。何の日だろうか?イエスが生まれた日だ。イエスが復活した日である。この日に、イエスは相続によって、さらに優れた名を手にしたのだ。

You will not be able to understand the authority of the name of Jesus until you understand this fact. Down in the prison house of suffering – down in hell itself – Jesus satisfied the claims of justice on behalf of each one of us, because He died as our substitute. God in Heaven said: “It is enough”. Then He raised Him up. He brought His spirit and soul up out of hell – He raised His body up from the grave – and He said “Thou art my son THIS DAY have I begotten thee”. What day? The day He was begotten. The day He was raised up. That’s the day, then, that he hath by inheritance obtained a more excellent Name.

「イエスが地獄に行った」というヘーゲンの教えが間違っていることは、イエスが十字架上で語られたルカ23:43の言葉からわかります。

イエスは彼に言われた。「まことに、あなたに言います。あなたは今日、わたしとともにパラダイスにいます。」 

ヘーゲンがこのように語るのは、イエスは人間であるが、三位一体の神ではないと考えているためです。これはビル・ジョンソンのキリスト論とよく似ています。いやむしろ、年代的にヘーゲンの教えが先ですので、ジョンソンがヘーゲンの教えの影響を受けているといった方がよいでしょう。これは正統的なキリスト教から外れた異端的信仰です。

別の福音

聖書とは別のイエスを教えているヘーゲンの語る福音も、聖書の福音とは異なる「別の福音」です。ヘーゲンは次のように語っています。

私たちの問題は、「十字架」の宗教を説いてきたことであり、「王座」の宗教を説く必要があります。つまり、人々は自分が十字架に留まるべきだと考えてきたということです。ある人は聖霊のバプテスマを受けて、十字架にまで後退し、そこに留まっています。…十字架は実際には敗北の場所であり、一方、復活は勝利の場所です。十字架を説くことは、死を説くことであり、人々を死の中に置き去りにすることです。2

The trouble with us is that we’ve preached a ‘cross’ religion, and we need to preach a ‘throne’ religion. By that I mean that people have thought they were supposed to remain at the cross. Some have received the baptism in the Holy Spirit, have backed up to the cross, and have stayed there ever since…The cross is actually a place of defeat, whereas the Resurrection is a place of triumph. When you preach the cross, you’re preaching death, and you leave people in death.

ヘーゲンは「十字架は敗北の場所」と語り、十字架ではなく復活を宣べ伝えるべきであると語ります。このヘーゲンの福音は、1コリント1:18、23でパウロが語る福音とは別の福音です。

18 十字架のことばは、滅びる者たちには愚かであっても、救われる私たちには神の力です。 … 23 私たちは十字架につけられたキリストを宣べ伝えます。

パウロは、十字架のことばは「人々を死の中に置き去りにする」ものではなく、「神の力」であると宣言しています。

ヘーゲンがこのように教えるのは、キリストの贖いについて異端的な神学を持っているためです。ヘーゲンは次のように語ります。

イエスはすべての人のために霊的な死を味わいました。そして、私の代わりにイエスの霊と内なる人が地獄に行ったのです。それがわからないのですか?肉体的な死では罪を取り除くことができないのです。イエスはすべての人のために死を味わいました。イエスは霊的な死を味わったと語っているのです。3

He [Jesus] tasted spiritual death for every man. And His spirit and inner man went to hell in my place. Can’t you see that? Physical death wouldn’t remove your sins. He’s tasted death for every man. He’s talking about tasting spiritual death.

霊的な死とは、神から離れるということだけではありません。霊的な死は、サタンの性質を持つことも意味します。…イエスはすべての人のために、死を、霊的な死を味わったのです。4

Spiritual death means something more than separation from God. Spiritual death also means having Satan’s nature…. Jesus tasted death – spiritual death – for every man.

「イエスがサタンの性質を持つ」という教え以上に悪魔的な神学はなかなか存在しないと思います。これもイエスが地獄に行って苦しみを受けたという神学から出てくるものです。しかし、ヨハネ19:30では、ヘーゲンの教えとは違って十字架上で贖いが完了していることを教えています。

イエスは酸いぶどう酒を受けると、「完了した」と言われた。そして、頭を垂れて霊をお渡しになった。

ここで「完了した」と訳されているギリシャ語の原語は「テテレスタイ」です。これは、借金が「完済済み」であると宣言する時と同じ言葉で、イエスが十字架上で私たちの罪の負債を完全に支払ってくださったことを意味します(コロサイ2:14参照)。

ケネス・ヘーゲンの教える信仰

結局のところ、ケネス・ヘーゲンの言う信仰とは、神、キリストへの信仰ではありません。ヘーゲンの言う信仰とは、ヘーゲン自身が教える信仰の原則(ワード・オブ・フェイス)に対する信仰であるということができます。ヘーゲンは、次のような「自分自身の信仰に信仰を持つ(have faith in your own faith)」という奇妙な教えを語っています。

あなたは、自分自身の信仰に信仰を持つことについて考えたことがあるだろうか。神はご自分の信仰に信仰を持っておられた。神は、言葉を語り、それが実現したのだから、神がご自分の信仰に信仰を持っておられたことは明らかだ。イエスはいちじくの木に語りかけ、その言葉が実現したのだから、明らかにイエスはご自分の信仰に信仰を持っておられた。言い換えれば、自分の言葉を信じることは、自分の信仰に信仰を持つことになる。
それが、神から何かを得るために学ぶ必要があることだ。自分の信仰に信仰を持つこと。「自分の信仰に信仰を持つ」と声に出して言うことが、あなたの霊に信仰をもたらすことに役立つ。それがあなたの心に刻み込まれるまで言い続けてほしい。最初に口にするときは奇妙に感じ、知性が反発するだろう。しかし、私たちは頭の中ではなく、心の中の信仰について語っているのだ。イエスがおっしゃったように、「心の中で疑ってはならない」のである。5

Did you ever stop to think about having faith in your own faith? Evidently God had faith in His faith, because He spoke the word of faith and they came to pass. Evidently Jesus had faith in His faith because He spoke to the fig tree, and what He said came to put. In other words, having faith in your words is having faith in your faith.
That’s what you’ve got to learn to do to get things from God. Have faith in your faith. It would help you to get faith down in your spirit to say out loud “Faith in my faith.” Keep saying it until it registers on your heart. I know it sounds strange when you first say it; your mind almost rebels against it. But we are not talking about your head, we’re talking about faith in your heart. As Jesus said. “… and shall not doubt in his heart…”

「神はご自分の信仰に信仰を持っておられた(God had faith in His faith)」「イエスはご自分の信仰に信仰を持っておられた(Jesus had faith in His faith)」など、読んでいて頭が痛くなるようなややこしい教えです。要するにヘーゲンの語る信仰は「信じて言葉にすればその通りになる」というもので、日本の言霊(ことだま)信仰と似ています。このような「ワード・オブ・フェイス」の教えについて、キリスト教Q&Aサイト「GotQuestions」は次のように解説しています。6

ワード・オブ・フェイスの教理によれば、信仰とは神に信頼して従うことではなく、繁栄の教師が信じる「宇宙を支配する霊的な法則」を思い通りに操るための公式なのです。「信仰の言葉(ワード・オブ・フェイス)」という名前が示すように、この運動は、信仰とは誰を信頼するか、どのような真理を受け入れて心に確信を持つかよりも、どのようなことを話すかが問題であると教えています。

Faith, according to the Word of Faith doctrine, is not submissive trust in God; faith is a formula by which we manipulate the spiritual laws that prosperity teachers believe govern the universe. As the name “Word of Faith” implies, this movement teaches that faith is a matter of what we say more than whom we trust or what truths we embrace and affirm in our hearts.

ヘーゲンの語る信仰は、聖書が教える神に対する信仰、イエス・キリストに対する信仰ではありません。

結論

ヘーゲンの教えは、キリスト教を装いながら、聖書が語る福音とはかけ離れています。ヘーゲンの語るイエスは聖書とは別のイエスであり、ヘーゲンの語る福音は聖書とは別の福音です。そのため、ヘーゲンの語る信仰を持っても、聖書の教える救いはありません。

この記事を書いた人:佐野剛史

写真:Kenneth Hagin Ministries: Home of Rhema Ministries – Kenneth E. Hagin Ministries, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=60390126

参考文献

  1. Kenneth Hagin, The Name of Jesus, (Kenneth Hagin Ministries, 1979), p 3

  2. Kenneth Hagin, The Believer’s Authority (Kenneth Hagin Ministries, 1986), p.16.

  3. Kenneth Hagin, “How Jesus Obtained His Name” (Kenneth Hagin Ministries), tape #44H01, side 1.

  4. Kenneth Hagin, “The Name of Jesus” (Kenneth Hagin Ministries, 1981), p. 31

  5. Kenneth Hagin, “Having Faith in Your Faith” (Faith Library, 1980), p.4

  6. GotQuestions, “What does the Bible say about the prosperity gospel?” (https://www.gotquestions.org/prosperity-gospel.html)

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