ケネス・ヘーゲン(1)繁栄の神学の父

ケネス・ヘーゲン

繁栄の神学(繁栄の福音)は、経済的な祝福や健康を与えることは常に神のみこころであり、信仰や、ポジティブな発言、宗教的な活動への寄付によって物質的な豊かさが増すという教えです。

この教えを世に広めた人物と言われているのが、「繁栄の神学の父」と呼ばれるケネス・ヘーゲン(1917~2003年)です。ヘーゲンは2003年に死去していますが、その著書はいまだに読まれており、ケネス・コープランド、クレフロ・ダラー、ジェシー・デュプランティスなど、ヘーゲンの弟子たちを通してその教えは今も人々に影響を与えています。

ヘーゲンは繁栄の神学を語る上で欠かせない人物ですので、今回の記事ではその教えと問題点を解説したいと思います。

繁栄の神学の父

繁栄の神学は、E・W・ケニオン(1867~1948年)が説き始め、ケネス・ヘーゲンが世に広めたと言われています。そのため、ケネス・ヘーゲンは、E・W・ケニオンと並び「繁栄の神学の父」と称されています。

ケネス・ヘーゲンはペンテコステ派の牧師で、レーマ聖書学校(Rhema Bible Training College)の創立者としても知られています。ヘーゲンはそのほか、レーマ聖書教会、ケネス・ヘーゲン・ミニストリーズを創立し、繁栄の神学を説いてきました。ヘーゲンのミニストリーはラジオ番組や、テレビ番組、6500万部を売り上げた出版事業に広がり、発行する月刊誌『Word of Faith(信仰の言葉)』は、購読者が60万人を数えました。

このような働きを通して、ケネス・ヘーゲンはどのようなことを教えたのでしょうか。ヘーゲンの教えを具体的に見ていきましょう。

ワード・オブ・フェイス(Word of Faith)

心で信じて、口で告白する。それが信仰の原則である。あなたが言うことをあなたは手に入れることができるのだ。1

Believe it in your heart; say it with your mouth. That is the principle of faith. You can have what you say.

ヘーゲンが語ったこの言葉は、ヘーゲンの代表的な「信仰の言葉(ワード・オブ・フェイス)」の教えを要約しています。信仰によって信じて告白することで求めているものを手に入れることができるというこの教えは、繁栄の神学の核となるもので、そのため繁栄の神学はワード・オブ・フェイス運動とも呼ばれます。

信仰の四原則

ワード・オブ・フェイス運動は、「宣言し、要求する(name it and claim it)」神学とも言われますが、ヘーゲンは「言ってみて、行動して、受け取って、話す(Say it, do it, receive it, and tell it)」という四原則を教えています。ヘーゲンは、この四原則を守ることで、神から求めているものを受け取ることができると言います。ヘーゲンによると、この原則はイエスから直接教えられたもので、イエスは次のように告げたと主張しています。

誰でも、どこでも、この4つのステップを踏み、この4つの原則を実行に移すなら、その人は常にわたしや父なる神から望むものを手に入れることができる。2

If anybody, anywhere, will take these four steps or put these four principles into operation, he will always have whatever he wants from Me or God the Father.

もちろん、聖書にこのような原則は教えられていません。ただし、ヘーゲンの教えの中では、重要な位置を占める原則となっています。

積極的な告白

ヘーゲンは、否定的な思いや、信仰、告白によって否定的な状況がつくり出されると教え、積極的な言葉を語ることで人生に勝利できると語ります。3

間違った思い、間違った信仰、間違った会話によって、みずからネガティブな状況を作り出すということがよくある。そのため、神のみことばに従って信じることを始めよう。そして、自分の人生に勝利するために、積極的な信仰の告白を始めよう。…もし自分の人生が気に入らないのなら、自分の思い、信仰、会話を変えてみよう。頭の中であるがままの状況に応じて語るのではなく、自分の霊から神のことばを語ることを学ぶのだ。いのちと健康と勝利に関する神の約束を自分の状況に向かって告白することを始めよう。そうすれば、次第に神の豊かな人生を楽しむことができるようになる。

Often you create your own negative situations yourself with wrong thinking, wrong believing, and wrong speaking. So start believing according to God’s Word. Then begin making positive confessions of faith and victory over your life. … If you don’t like what you have in life, then begin to change the way you are thinking, believing, and speaking. Instead of speaking according to natural circumstances out of your head, learn to speak God’s Word from your spirit. Begin to confess God’s promises of life and health and victory into your situation. Then you can begin to enjoy God’s abundant life as you have what you say!

この言葉は、ワード・オブ・フェイス運動の教えを端的に言い表しています。ワード・オブ・フェイス運動のマニフェストと呼ぶことができるかもしれません。繁栄の神学を教える説教者は、上記のヘーゲンの教えをそっくりそのまま教えています。

ヘーゲンは次のようにも語っています。

あなたが語ることは、あなたのものにできる。神の約束手形(ticket)は自分で書くことができる。そして、神との約束手形を書くための最初のステップは、「言ってみる」ことである。……もしあなたが自分の試練や、困難、信仰のなさ、お金がないことについて話すなら、あなたの信仰は萎縮し、干上がってしまう。しかし、神のみことば、愛すべき天の父、そして神ができることについて話すなら、あなたの信仰は飛躍的に成長する。4

You can have what you say. You can write your own ticket with God. And the first step in writing your own ticket with God is: Say it… If you talk about your trials, difficulties, your lack of faith, your lack of money – your faith will shrivel and dry up. But, bless God, if you talk about the Word of God, your lovely Heavenly Father and what He can do – your faith will grow by leaps and bounds.

ヘーゲンの教えを要約すると、神はクリスチャンに健康と繁栄を約束しておられるので、クリスチャンがすることはそれを宣言して自分のものとするだけだ、というものです。しかし、神は信者を祝福してくださいますが、健康と繁栄を約束しておられるわけではありません。ヤコブ4:13~16ではこう言われています。

13  「今日か明日、これこれの町に行き、そこに一年いて、商売をしてもうけよう」と言っている者たち、よく聞きなさい。 14  あなたがたには、明日のことは分かりません。あなたがたのいのちとは、どのようなものでしょうか。あなたがたは、しばらくの間現れて、それで消えてしまう霧です。 15  あなたがたはむしろ、「主のみこころであれば、私たちは生きて、このこと、あるいは、あのことをしよう」と言うべきです。 16  ところが実際には、あなたがたは大言壮語して誇っています。そのような誇りはすべて悪いことです。 

クリスチャンは「主のみこころであれば、私たちは生きて、このこと、あるいは、あのことをしよう」と言うべきであって、自分の願うことを積極的に告白すれば、必ずその通りなるというものではありません。

このヘーゲンの教えはたいへん問題のある教えですが、ヘーゲンはそれ以上に問題がある教えを教えています。それは「小さな神の教え」と呼ばれる教えです。

「小さな神」の教え

この点は見過ごされがちですが、繁栄の神学はなぜ信仰によって求めるものを手に入れることができると主張しているかというと、クリスチャンは神の子というだけではなく、神のような存在でもあるという思想があるためです。これを「小さな神の教え(Little god doctrine)」と言います。

人間は神と対等の存在

ヘーゲンは著書の中で次のように語っています。5

人間は神と対等の存在として創造された。人間は、劣等感を抱くことなく神の前に立つことができる。…神は私たちを可能な限りご自身に似せてくださった。…. 神は、私たちをご自身と同じ部類の存在とされた。… 人は神の領域に住んでいた。人は神と対等に生きていたのである。

Man was created on terms of equality with God, and he could stand in God’s presence without any consciousness of inferiority… God has made us as much like Himself as possible…. He made us the same class of being that He is Himself…. Man lived in the realm of God. He lived on terms equal with God.

上記のヘーゲンの言葉は、詩篇144:3~4のダビデの言葉とは対照的です。

3  【主】よ 人とは何ものなのでしょう。あなたがこれを知っておられるとは。人の子とはいったい何ものなのでしょう。あなたがこれを顧みられるとは。 4  人は息にすぎず、その日々は影のように過ぎ去ります。 

神は「人をわれわれのかたちとして、われわれの似姿に造ろう」(創世記1:26)とは言われましたが、「人を神と対等の存在」、「同じ部類(class)の存在」として創造されたとはどこにも書かれていません。神のことばにわずかであっても致命的な嘘を忍び込ませるというやり方は、創世記3章で蛇がとった方法でもあります。

人は病や貧困、罪を支配

さらに、ヘーゲンは神と対等の存在である人間は、病や貧困、さらには罪をも支配することができると教えます。6

確かに、かつては罪、病気、霊的な死、貧困など、悪魔に属するあらゆるものが私たちを支配していた。しかし今は、ああ神よ、私たちがそうしたものを支配しているのだ。

Yes, sin, sickness and disease, spiritual death, poverty and everything else that’s of the devil once ruled us. But now, bless God, we rule them…

上記のような教えが、宣言によって病や貧困に勝利できるという教えにつながっています。

クリスチャンは受肉した神、キリスト

ヘーゲンは、クリスチャンはイエスと同様に受肉した神だと教えています。この教えは、ケネス・コープランドやベニー・ヒンといった繁栄の神学の教師たちに今も受け継がれています。

信者は、イエス・キリストと同じように受肉した神である。……もし私たちが目を覚まし、自分が何者であるかに気付けば、自分がすべき仕事を始めるはずだ。なぜなら、教会は自分たちがキリストであることにまだ気づいていないからだ。それが彼らの本質だ。彼らはキリストである。7

The believer is as much an incarnation of God as Jesus Christ … If we ever wake up and realize who we are, we’ll start doing the work that we’re supposed to do. Because the church hasn’t realized yet that they are Christ. That’s who they are. They are Christ.

これは言うまでもなく異端です。人が神になろうとする罪は、アダムの時代から続く最も古く、根源的な罪です。創世記3:4~5では、この罪を犯すように誘惑したのは蛇(サタン)であると語っています。

4 すると、蛇は女に言った。「あなたがたは決して死にません。 5 それを食べるそのとき、目が開かれて、あなたがたが神のようになって善悪を知る者となることを、神は知っているのです。」

そしてサタンも、神のようになるという同じ罪を犯して堕落したことが、イザヤ14:13~14で明かされています。

13 おまえは心の中で言った。『私は天に上ろう。神の星々のはるか上に私の王座を上げ、北の果てにある会合の山で座に着こう。 14 密雲の頂に上り、いと高き方のようになろう。』

人が神のようになれるという教えは、悪魔の教え、悪霊の教えです。このような教えを繁栄の神学の教師たちが大胆に教えている現代は、1テモテ4:1が言うように、終わりの時代であると言うことができるのではないでしょうか。

1 しかし、御霊が明らかに言われるように、後の時代になると、ある人たちは惑わす霊と悪霊の教えとに心を奪われ、信仰から離れるようになります。

最後に

最後に、ケネス・ヘーゲンがどのような人物かを垣間見ることができる動画を紹介します。この動画では、ケネス・ヘーゲンが説教を始めようとしますが、どういうわけか笑いを抑えることができず、ついには講壇を降りて会場をうろうろし始めます。動画の冒頭で次のように話しているのは、そのことの釈明です。

これがいつもと違うことはわかっていますが、あのね……私はそうするつもりはなかったんだよ。そもそも、私には良い(説教)を用意していたと言っていたでしょ。完全に聖書的な説教です。しかし、聖霊に支配されてしまったのです。

I know this is different, but, uh … you know — I didn’ intend to go this way. Told you to begin with I had a good’n (sermon). Throroughly scriptual. But the Holy Ghost got ahold of me.

出典:Phil Johnson, “Kenneth Hagin pretends he is about to preach; acts demon-possessed instead” (https://www.youtube.com/watch?v=o7A_1JuHLHs)

ヘーゲン本人は、この動画の中で起こったことは聖霊のみわざであると語っていますが、筆者にはそうは見えません。ヘーゲンの教えやこの動画を見ていると、今は1テモテ4:1の言う「後の時代」であることを改めて思わざるをえません。

この記事を書いた人:佐野剛史

写真:Kenneth Hagin Ministries: Home of Rhema Ministries – Kenneth E. Hagin Ministries, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=60390126

参考文献

この記事を書いた人:佐野剛史

  1. Kenneth Hagin, You Can Have What You Say (Tulsa: Faith Library, 1979), p.14

  2. Kenneth Hagin, How to Write Your Own Ticket with God (Kenneth Hagin Ministries, 1979), p.10

  3. Kenneth Hagin, “You Can Have What You Say,” The Word of Faith (1990)

  4. Kenneth Hagin, How to Write Your Own Ticket with God (Kenneth Hagin Ministries, 1979), p.8

  5. Kenneth Hagin, Zoe: The God-Kind of Life (Kenneth Hagin Ministries, 1989), pp. 35-36, 41.

  6. Kenneth Hagin, “Rejoice! This Is the Day Which the Lord Hath Made,” The Word of Faith, (Sept. 1996), p.16

  7. Kenneth Hagin, “The Incarnation,” The Word of Faith (Dec. 1980)

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