ベニー・ヒンの甥、コスティ・ヒンの告白

コスティ・ヒンとベニー・ヒン

ベニー・ヒンのミラクルクルセード

ベニー・ヒンは、1980年代から「いやしと奇跡の伝道者」として活動し、世界各地で「ベニー・ヒンのミラクルクルセード」と呼ばれる集会を開いている有名な伝道者です。来日したことも何度かあり、著作も何冊か邦訳されていて、筆者もクルセードに参加した人から集会の様子を聞いたことがあります。

ベニー・ヒンのクルセードの特徴は「聖霊によって倒される」ことで、ベニー・ヒンが会場の聴衆に向かって手を上げ、「聖霊を受けよ!」などと叫ぶと、聴衆が後ろ向きにバタバタと倒れていく。そのような光景が毎回見られ、倒れたことが「聖霊の油注ぎ」を受けた証拠であると教えられています。また、病のいやしを求める人々が大勢集まることでも知られています。

ベニー・ヒンの甥、コスティ・ヒンの証言

ベニー・ヒンの甥であるコスティ・ヒンは、この「奇跡といやし」の集会の内情をカナダの放送局CBCの番組「The Fifth Estate」に語り、その動画がYouTubeで公開されています。

ドキュメンタリー番組「The insider: Tales from inside Benny Hinn Ministries – The Fifth Estate」(インサイダー:ベニー・ヒン・ミニストリーズの内幕)

コスティ・ヒンは、ベニー・ヒンの集会で、「聖霊によって倒された」人々がケガをしないように後ろで支える「キャッチャー」と呼ばれる仕事をしていました。そのようにベニー・ヒン・ミニストリーズのスタッフとして、叔父と一緒にプライベートジェットに乗って全世界を回り、ミニストリーを支えていたコスティ・ヒンは、この動画で次のように告白しています。

私はここで、皆さんの前に心をさらけ出して言います。正直な告白です。私は完全な欺きが行われていることを知る立場にいました。

I’m gonna kind of bare my soul here with you. Honest confession. I would know that there were certain things that were completely deceptive.

コスティ・ヒンの語る「欺き」とは一体何でしょうか。動画の中では、その内容を具体的に知るためのもう一人の証言者として、一人の車椅子の女性が証言しています。

「いやし」のクルセードの実態

カナダのブリティッシュ・コロンビア州に住むグレース・ブルロットは、生まれつき関節が湾曲する病気を患い、小さい頃から車椅子で生活している女性です。そのグレースが8歳の時、カナダのカルガリーでベニー・ヒンのクルセードが開催されたことがありました。グレースは、いやされて、立って歩けるようになることを夢見て、ベニー・ヒンのクルセードに参加しました。

ミラクルクルセードには、ステージに上がってベニー・ヒンに祈ってもらう時間があります。その時には、多くの聴衆がステージに集まってきます。母親のジェニファーは、車椅子のグレースもステージに連れて行こうとしますが、途中でスタッフに止められてしまいます。「本当にいやしを必要としている病人や障がい者をベニー・ヒンに近付けない」1ためでした。グレースはその時のことを次のように語っています。

精神的に少しダメージを受けたので、過去を振り返ってそのことを考えるだけでも、私にとっては難しいのです。

Emotionally it was a little damaging for me, so to go back and even just think about it is difficult for me.

このようないやしの集会でもう一つよく起こることは、いやしが起こらなかった場合、いやしを約束した説教者を責めるのではなく、いやしを求める人が「自分の信仰が足りなかった」と自分を責めてしまうことです。グレースにも、同じことが起こりました。しかし今では、その当時を振り返って次のように語っています。

彼は弱っている人々を利用しているのだと思います。

And I think he takes advantage of people who are vulnerable.

ベニー・ヒンのクルセードでいやしが起こっていたのかという問いに対して、コスティ・ヒンは次のように明言しています。

いやしの証しやいやしの話は目の前で聞いていましたが、実際にいやされるのを見たことは一度もありませんでした。 叔父や他の人が誰かに手を置いて「イエスの名によって起き上がって歩きなさい」と言うと、聖書にあるように、すぐに立ち上がって歩く。そのような光景は一度も見たことがありません。

I saw the testimony of healing and I saw the stories about healing, but I never once saw a real healing. I never once saw my uncle or anyone else for that matter go and lay hands on someone and say, in Jesus name, rise and walk and they would walk right away, just like you see in the Bible.

スタッフとしてベニー・ヒンのクルセードを何十回も直接見てきたコスティ・ヒンの「実際にいやされるのを見たことは一度もありませんでした」という言葉は、衝撃的ですが、長年クルセードの内情を知る人間の証言として信頼性が高いものです。

また、ベニー・ヒンのクルセードを取材してドキュメンタリーを制作したテレビ局HBOのディレクター、アントニー・トーマスも、ヒンによっていやされた人を一人も見なかったとして、CNNの取材に対して次のように答えています。2

(ヒンのミニストリーで)もし私が奇跡を目にしていたら、喜んで喧伝していたでしょう。……しかし、今振り返ると、彼らは最も熱心な無神論者よりも大きなダメージをキリスト教に与えていると思います。

If I had seen miracles [from Hinn’s ministry], I would have been happy to trumpet it… but in retrospect, I think they do more damage to Christianity than the most committed atheist.

繁栄の福音のカラクリ

この動画の中で、コスティ・ヒンは繁栄の神学による宗教ビジネスのカラクリを明らかにしています。動画の中には、ベニー・ヒンがこう語るシーンが収録されています。

より多くの額を蒔くことで、信仰が解き放たれ、信仰が解き放たれた時に、全能の神が収穫を解き放ってくださるのです。そういう仕組みになっているのですよ、みなさん。

When you sow larger amounts you release faith and when faith is released, God Almighty will release the harvest. That’s just the way it works, people.

このような教えに対し、コスティ・ヒンは次のように反論します。

繁栄の福音とは、イエスを信じ、イエスに従えば、イエスがあなたを幸せで健康で裕福にしてくれるというものです。問題は、それがネズミ講のようなものだということです。裕福になるのはトップの人だけです。

Yeah, so the way that the prosperity gospel works is that if you believe in Jesus and you follow Jesus that he is gonna make you happy, healthy and wealthy. The problem is, it’s just like a Ponzi scheme. The only guy getting rich, is the guy at the top.

実際に、ベニー・ヒンは多いときで年間に1億ドル(約110億円)を稼ぎ、プライベートジェットに乗り、一晩1万ドル(約110万円)のホテルに泊まるという豪奢な暮らしをしています。そのような叔父について、コスティ・ヒンは次のように語っています。

聖書とまったく矛盾します。これは完全な詐欺です。まったくの欺瞞です。教会にそのようなことを許す余地はありません。牧師がそのようなことをするべきではありません。聖書には「あなたのお金を全部、私の活動に寄付してください」と語ることをよしとする箇所は一つもありません。それは詐欺です。完全な詐欺です。

It doesn’t square with the Bible at all. It’s a complete scam. It’s utter deception. There’s no place for it in the church. No pastor should ever do that. There is no model for, hey, give all your money to, to my thing. That’s a scam. Complete scam.

保守的クリスチャン最大の脅威

コスティ・ヒンは、次のようにも語っています。

クリスチャン、保守的クリスチャンにとっての最大の脅威は、リベラル派ではありません。最大の脅威は内側から来るのです。それは、羊のように見えても狼である人々です。

この「狼」が、神からのいやしや祝福を約束する「繁栄の福音(繁栄の神学)」を語り、人々の献金で富を築いているベニー・ヒンのような説教者であるというのが、コスティ・ヒンの主張です。そのような説教者が人と献金を集めるためにいやしを約束することの代償が、前述したグレースのように精神的に傷ついてしまう人々を生み出してしまうことです。

このような説教者について、コスティ・ヒンは次のように語ります。

これまでの実績が何を示しているかご存じですか?私の叔父のような人は、人々を食い物にしている、ということです。

You know what the track record shows? That men like my uncle, they are devouring people.

この動画で取り上げられているのはベニー・ヒンだけですが、繁栄の神学を説く説教者はほかにも数多くいます。新使徒運動(NAR)の指導者もその中に含まれ、その中でも特にベニー・ヒンに近い新使徒運動の指導者に、米国カリフォルニア州レディングのベテル教会牧師、ビル・ジョンソンがいます。ベニー・ヒンとビル・ジョンソンの蜜月ぶりは、YouTube動画でも見ることができます。ベニー・ヒンは日本では少し過去の人という印象がありますが、ビル・ジョンソンは近年に二度来日(2015年、2016年)するなど、日本でも影響力が広がりつつある指導者ですので警戒が必要です。

最後に

このような「狼」がうごめく時代にあって、私たちはどのようにして羊の皮を被った狼を見分ければよいのでしょうか。パウロは、自分が地上を去った後に「狂暴な狼」が教会に入り込むことを前もって告げていました。使徒20:29~31でエペソの教会の長老たちに向けて、パウロはこう語っています。

29 私は知っています。私が去った後、狂暴な狼があなたがたの中に入り込んで来て、容赦なく群れを荒らし回ります。 30 また、あなたがた自身の中からも、いろいろと曲がったことを語って、弟子たちを自分のほうに引き込もうとする者たちが起こってくるでしょう。 31 ですから、私が三年の間、夜も昼も、涙とともにあなたがた一人ひとりを訓戒し続けてきたことを思い起こして、目を覚ましていなさい。

ベニー・ヒンは、パウロが語る狼の一例です。パウロはここで、信者に対して「目を覚ましていなさい」と語っています。どのように目を覚ましていればいいのでしょうか。次の節に、その答えも語られています。

32 今私は、あなたがたを神とその恵みのみことばにゆだねます。みことばは、あなたがたを成長させ、聖なるものとされたすべての人々とともに、あなたがたに御国を受け継がせることができるのです。

答えは「みことば」です。「みことばは、あなたがたを成長させ、聖なるものとされたすべての人々とともに、あなたがたに御国を受け継がせることができる」ためです。識別力を養い、狼を見分けるために必要なのは、みことばを知ること。これがパウロから終わりの時代に生きる私たちへのメッセージです。

参考資料

記事を書いた人:佐野剛史

  1. 動画14:20付近ナレーション「But before long they were stopped by the screeners who keep the truly sick and disabled away from Benny Hinn.」

  2. “Benny Hinn”, WikiPedia (https://en.wikipedia.org/wiki/Benny_Hinn)

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