新使徒運動(NAR)の指導者、ビル・ジョンソンが主任牧師を務めるベテル教会には、預言者の養成学校があります。「ベテル預言者学校(Bethel School of Prophets)」と呼ばれるこの学校は、年に1回開かれる短期講座のみですが、受講生が米国各地から、またオンラインで世界各地から集まり、「預言者」になるための訓練を受けます。公式ウェブサイトには、次のような紹介文が掲載されています。1
ベテル預言者学校は、預言者、預言者予備軍、預言者と共に活動する方法を発見したい教会指導者のための1週間の集中トレーニングイベントです。2022年度の預言者学校で、あなたの預言者としての召しを前進させ、高め、発見してください。
School of the Prophets is a one-week intensive training event for prophets, highly prophetic people, and Church leaders who want to discover how to operate with prophets. Advance, increase and discover your prophetic calling at the School of the Prophets 2022.
また、ベテル教会には「ベテル超自然的学校(Bethel School of Supernatural Ministry)」と呼ばれる2年制の神学校があり、そこでも預言者となるための授業があります。
このように「預言者」の養成に力を入れるベテル教会ですが、どのような理念に立って、どのような預言者を養成する教育が行われているのでしょうか。
> 「クリスチャンは全員預言者」「クリスチャンは全員預言者」
ビル・ジョンソンは、「神の民はみな預言者」と語り、すべてのクリスチャンが預言者になれると語っています。2
神の民はみな預言者です。イエスは預言者について語り、旧約聖書の霊的な父たちは、私たちが見ているものを見たいと願っていました。 モーセは、心の痛みを感じながら、皆さんや私が生きているこの日のことを預言していたことを指摘したいと思います。すべての神の民が、預言者の油注ぎを携えることになる日です。
All God’s people are prophets. Jesus talked about the prophets and the spiritual fathers of the Old Testament longed to see what we see. I’d like to suggest to you that out of the ache of his heart Moses was prophesying about the day that you and I live. All the people of God would be carrying prophetic anointing.
また、ベテル教会オースティン(米国テキサス州)のシニアリーダーであり、ベテル教会の預言者学校で預言の入門講座を教えているルネー・エバンス(Renee Evans)も、次のように語っています。3
私が日常的預言者(everyday prophet)という時、誰のことを指していると思いますか。それは皆さん、皆さんです。私や皆さんが日常的預言者なのです。
When I speak we are going to be talking about the everyday prophet the everyday prophet guess who the everyday prophet is y’all all y’all. You and I are the everyday prophet.
ただ、このベテル教会の教えは、聖書の教えに反しています。1コリント12:29で、パウロは次のように語っています。
皆が使徒でしょうか。皆が預言者でしょうか。皆が教師でしょうか。すべてが力あるわざでしょうか。
この質問は「いいえ」という答えを期待する修辞疑問文です。すべての人が預言者であるわけがないことは明らかです。
また、ベテル預言者学校が行っている預言者となるための教育にも大きな問題があります。
> 「失敗のない預言テクニック」「失敗のない預言テクニック」
先ほど紹介したルネー・エバンスは、「失敗のない預言テクニック(fail-proof prophetic techniques)」として、次のように教えています。4
聖霊に、誰かに贈る言葉を与えてほしいと求めてください。一言でも結構です。一文や聖句1か所でもいいのです。あなたに見えている光景でもいいのです。だから、聖霊に言葉を求めてください。もし聞こえなければ、話を作ってしまってもいいのです。私が冗談を言っていると思っているでしょうが、本気です。
I want you to ask Holy Spirit to give you a word to someone. It could be a single word. A sentence or scripture. A picture that you’re seeing. So ask him for a word. If you are not hearing one, make it up. You think I’m joking but I’m not.
コメントをする必要もないと思いますが、明らかに間違った教えです。「もし聞こえなければ、話を作ってしまってもいいのです。私が冗談を言っていると思っているでしょうが、本気です」というエバンスの言葉には、狂気さえ感じます。
また、次の1コリント12:11で言われているように、賜物は聖霊によって与えられるものであって、訓練や練習によって取得できるものではありません。
同じ一つの御霊がこれらすべてのことをなさるのであり、御霊は、みこころのままに、一人ひとりそれぞれに賜物を分け与えてくださるのです。
また、ベテル預言者学校と同様、ベテル超自然的学校でも、預言者となるための授業が開かれています。ベテル超自然的学校の元学生であるリンジー・デイビス(Lindsay Davis)は、元ニューエイジ信者のクリスチャンであるメリッサ・ダハティ(Melissa Dougherty)とドリーン・バーチュー(Doreen Virtue)のインタビューに答えて、次のように証言しています。5
メリッサ・ダハティ:ベテル超自然的学校では、預言の方法や、自分が持っていない霊的な賜物について、どのように教えていたのですか?
リンジー・デイビス:そうですね、これが興味深いところです。ベテル教会の「預言者」の名前は、クリス・バロットンというのですが、クリスが学校で話をしたことは、入学した最初の週の思い出の一つになっていて、今でもはっきりと覚えています。クリスは私たち全員を立たせて隣の人の方を向くように指示し、これから預言の方法を教えると言いました。クリスは私たちに、隣の人のお母さんの名前は何かを神にたずね、それを相手に伝えるようにと言ったのです。それで、基本的にはコールドリーディング※のような、そうですね、当てずっぽうで名前を当てるようなことをしました。まあ占いですね。
…
ドリーン・バーチュー:何が腹立たしいかというと、このような授業を私もニューエイジで20年間も教えていたことです。私たちはこれを「エンジェル(天使)・リーディング」と呼んでいました。目が開かれて聖書全体を読んだ後に、これは実際には「デーモン(悪霊)・リーディング」だったことがわかりました。今ではそのことを後悔していますし、その影響を受けてしまった人には申し訳ないと思っています。当時はそんなことは知りませんでしたが、今となってはわかります。私にとって、キリスト教を装ってこのようなことが行われているのはおぞましいことです。
Melissa Dougherty: How did they teach how would you teach somebody how to prophesy or to have spiritual gifts that they don’t have?
Lindsay Davis: Well it’s interesting. The “Prophet” at Bethel Church, his name is Kris Vallotton. I remember one of my distinct memories about the first week of school is, you know, having Chris speak at school and he had all of us stand up and we would turn to our neighbor and he said that he was going to teach us how to prophesy. So essentially he asked us to ask God what our neighbor’s mother’s name was and then we were supposed to tell them. And so it’s basically like cold reading, you know, basically like a guessing game. It’s a divination.
…
Doreen Virtue: What’s upsetting to me is that I did teach these kind of classes in the New Age and I taught it for gosh 20 years. And we called it Angel Readings. I got my eyes open and read the whole Bible and found that it was actually demon readings. I regret that and I apologize to anyone who was affected by that. I did not know but now that I know it’s to me it’s disturbing that it would be under the guise of Christianity to do these things.
上記のようなことが教会が運営する学校で教えられているのは信じがたいことですが、事実です。このような教育を受けて世に出て行く「預言者」が、どのような破壊的な結果をもたらすかは想像に難くありません。
> 「間違ったからといって、それで偽預言者になるわけではない」「間違ったからといって、それで偽預言者になるわけではない」
それでは、「預言者」が語った預言が実現しなかった場合はどうなるのでしょうか。先ほどのルネー・エバンスは、次のように語っています。6
私は今、預言の入門クラスを教えています。このクラスで学べば、さらに訓練を受けることができ、集まって預言の練習をするグループに参加する機会があります。時々、私たちは間違ってしまうことがあります。言いたいことはわかります。ただ、間違ったからといって、それで偽預言者になるわけではありません。
I teach every now in a prophetic 101 and equip class. If you’ve gone through this class and you’ve gotten an invitation to be further equipped or to participate in a group of us who just get together and we just practice prophesying. Guess what sometimes we get it wrong. I know, I know and that does not make people a false prophet.
預言を練習するというもおかしな話ですが、ここで問題にしたいのは、「(預言を)間違ったからといって、それで偽預言者になるわけではありません」という発言です。もし神のことばであると語って実現しなければ、預言を語られた相手は「やはり神などいないのだ」とか、「神はご自分のことばを守ってくださらなかった」という誤った結論に至ってしまう可能性があります。エバンスは「預言」という言葉の持つ重みをまったく理解していません。
ベテル預言者学校の校長を務めるクリス・バロットン(Kris Vallotton)も同様です。バロットンは、2020年の米大統領選挙で、トランプ大統領が再選を果たして2期目を務めると預言していましたが、そうはなりませんでした。その後、2020年11月7日に預言が実現しなかったことを謝罪する動画をFacebookに掲載し、その後すぐに削除するという混乱がありつつ、結局、議会が大統領選の結果を承認した後、謝罪動画を再掲載しました。その中で、バロットンは次のように語っています。
間違ったことの責任はすべて私が取ります。言い訳はできません。これで私が偽預言者になるわけではありませんが、信頼性のギャップが生じている現実があります。多くの人が私と私のミニストリーを信頼してくれていますが、私に信頼を寄せてくれた皆さんには本当に申し訳ないと言いたいのです。
I take full responsibility for being wrong. There’s no excuse for it. I think it doesn’t make me a false prophet but it does actually create a credibility gap. A lot of people trust me and my ministry, and I want to say that I’m very sorry for everyone who put their trust in me.
バロットンは、「(預言が)間違ったことの責任はすべて私が取ります」と言いながら、「これで私が偽預言者になるわけではありません」と語っています。預言者学校の校長も辞任していないバロットンがこれでどのような責任を取ったのかは不明ですが、このような姿勢は聖書が教える預言者の基準とはかけ離れていることは確かです。
聖書の基準
預言者を見分ける基準について、申命記18:20~22では次のように言われています。
20 ただし、預言者であっても、わたしが告げよと命じていないことを、不遜にもわたしの名によって告げたり、あるいは、ほかの神々の名によって告げたりする者がいるなら、その預言者は死ななければならない。 21 あなたが心の中で、「私たちは【主】が語られたのではないことばを、どのようにして知ることができるだろうか」と言うような場合、 22 預言者が【主】の名によって語っても、そのことが起こらず、実現しないなら、それは【主】が語られたことばではない。その預言者が不遜にもそれを語ったのである。彼におびえることはない。
聖書の基準によると、もし預言が実現しないのなら、その人は預言者ではなく、偽預言者です。
偽預言者に対する警告
聖書は、偽預言者に対する厳しいさばきを告げています。偽預言者に対して、エゼキエル13:2~3、6~8では次のように警告されています。
2 「人の子よ。預言をしているイスラエルの預言者どもに対して預言せよ。自分の心のままに預言する者どもに向かって言え。『【主】のことばを聞け。 3 【神】である主はこう言われる。わざわいだ。自分で何も見ないのに、自分の霊に従う愚かな預言者ども。 … 6 彼らはむなしい幻を見、まやかしの占いをして、「【主】のことば」などと言っている。【主】が彼らを遣わしたのではないのに。しかも、彼らはそのことが成就するのを待ち望んでいる。 7 あなたがたが見ているのはむなしい幻、あなたがたが語るのはまやかしの占いではないか。「【主】のことば」などと言っているが、わたしが語っているのではない。 8 それゆえ、【神】である主はこう言われる。あなたがたは、むなしいことを語り、まやかしの幻を見てきた。それゆえ今、わたしはあなたがたに敵対する──【神】である主のことば──。
聖書を読むと、偽預言者に対する神のことばの厳しさがわかります。このみことばでは、自分の心のままに預言をする偽預言者には、神ご自身が「敵対する」と言われています。神を敵に回すことは恐ろしいことです。そのような「預言者」が教会で預言を教えているということは、本来はありえないことです。
> まとめまとめ
今回はベテル教会が運営する「預言者学校」の問題とその危険性について見ました。ただし、預言者学校を運営しているのはベテル教会だけではありません。同じく新使徒運動(NAR)の指導者であるリック・ジョイナーも預言者学校を運営していますし、そのほかにもインターネットを検索すればいくつも出てきます。イエスは、終末時代の特徴の一つとして「偽預言者が大勢現れて、多くの人を惑わします」(マタイ24:11)と語っておられますが、それが現実のものになっていることを感じます。
この記事を書いた人:佐野剛史
> 参考資料参考資料
- ウィリアム・ウッド『日本の教会に忍び寄る危険なムーブメント』(ハーベスト・タイム・ミニストリーズ、2018年)
- ウィリアム・ウッド『新使徒運動はなぜ危険か』(いのちのことば社、2020年)
- Revealing Truth, “Bethel Says Just Make Up Prophecy” (https://www.youtube.com/watch?v=zKeNVT7iwuo)
- Brandon Hines, “What Are Bill Johnson’s Heresies?” (https://pulpitandpen.org/2016/11/14/what-are-bill-johnsons-heresies/)
-
Bill Johnson, “All Must Prophesy” (https://www.youtube.com/watch?v=T-uwdMuyzUA) ↩
-
Bethel Austin, “Everyday Prophet Part 1 – Renee Evans” (https://www.youtube.com/watch?v=U3zJbmMw4Bs) ↩
-
同上 ↩
-
Doreen Virtue, “Ex-Bethel Student Tells All: Lindsay Davis Testimony” (https://www.youtube.com/watch?v=winCHM9yuY4&t=69s) ↩
-
Bethel Austin, “Everyday Prophet Part 1 – Renee Evans” (https://www.youtube.com/watch?v=U3zJbmMw4Bs) ↩
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